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圧電効果(「物性科学事典」)

圧電効果
物質の特定の方向に力を加えるとき、応力に比例した電気分極が発生する現象
(正圧電効果)。および、物質に電場を印加するとき、電場に比例したひずみを
生じる現象。(逆圧電効果)
圧電性を示す材料には数多くの結晶があり、また、圧電性高分子が重要である。
後者では電気双極子をもつ分子が物質の全体または一部を構成し、それら電気双極子
が一軸性配向をしている場合、あるいは十分に強い外部電場で向きをそろえた(ポーリング)
場合に見られる。いずれも電気エネルギー⇔機械的エネルギーの変換、フィルター、周波数標準
などに広く応用されている(→圧電素子)。
すべての結晶はその点群対象性で32の晶群に分類できるが、これらのうちで対象中心点
(反転対称点)をもつ11晶群は圧電効果をもたない。残り21のうちで極性をもつ10晶群は
すべて圧電性を示し、また、極性をもたない11の晶群では立方点群O-432を除いて圧電性を
示す。
なお、上記の極性をもつ結晶はすべて焦電性も示す。焦電性とは、結晶の温度を変化させたときに
電気分極が現れる性質である。
系の熱力学状態を記述するのに、応力σ、ひずみγ、電場Eおよび分極Pの4変数の
うち2つを独立変数として選ぶ。圧電効果は前記のように一次効果であるから、分極の3成分
(P1、P2、P3)、ひずみテンソルの6成分
(γ1、γ2、γ3は圧縮ひずみ、γ4、γ5、γ6
はせん断ひずみ)は、応力テンソルの6成分
(σ1、σ2、σ3は圧縮応力、γ4、γ5、γ6
はせん断応力)、電場の3成分(E1、E2、E3)および18の
圧電定数dij(i=1,2,3, j=1,2,・・・,6)で
と記述できる。また、圧電定数の逆行列eijを用いて
と記述できる。dijとeijとは電場一定での弾性テンソルcij
Eを用いて
と記述できる。なお、これら18の係数は結晶の対象性が高くなるにつれて、値が0になる成分が増す。
例えば立方晶系ではd14、d25 、d36のみが必要でほかは0になる。
典型的な圧電単結晶の水晶ではd11=2.31pm/V、d14=0.727pm/V、
またLiNbO3ではd33=6pm/Vである。セラミックスの形で用いる
ジルコン酸チタン酸鉛(PZT-4)ではd=289pm/Vと大きい。高分子材料では、ポリフッ化ビニリデン
(PVDF)がdijの平均値d=18pm/Vである。また、特に100MHz帯以上の高周波領域で
多用されている薄膜トランデューサーZnOではd=10.6pm/Vである。
前述の極性をもつ結晶では、キュリー温度Tc以下で自発分極が存在する。このような物質を
強誘電体という。ただし、表面に現れる電荷によるエネルギー増加を減らすためにドメインができて、
試料全体としては分極ができないことが多い。これは強磁性体で磁区が出来る事情と全く類似している。
強誘電性をミクロな立場から説明する一例として、BaTiO3を考える。この物質の
キュリー温度は380Kで、これより低温側では図に示すように結晶構造が1つの[100]方向に伸び、
特にTiイオンが立方体の中心からずれた位置にある。このTiイオンの変位が結晶全体の
分極となって現れるのである。これはTiイオンのポテンシャルが2つの極小を持つと理解してもよい。
図 BaTiO3結晶の単位胞を上から見た図
Baイオンは図の上方へ6pm、Tiイオンは同じく上方へ12pm、Oイオンは下方へ3pmずれていることを示す。
キュリー温度以上では強誘電性は消失して常誘電相となる。常誘電相での誘電率εはキュリー則
ε=A/(T-Tc)
に従うことが多い。ここでAは定数、Tは物質の温度(絶対温度目盛)である。(生嶋明)
[参考文献]
「物性科学事典」(東京大学物性研究所) P.17〜P.18(東京書籍株式会社 1996年2月29日第一刷発行)


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